街に明かりを灯し、
人が集う場を提供します。
街のスキマをぱっと灯す。
人に笑顔をぱっと灯す。
みんなの未来をぱっと灯す。
灯をつなぎ人が集う場へ。
【ぱっと二条プロジェクト】
始まります。
【 ぱっと二条プロジェクト 】
JR佐野駅の東側。駅前通りである大正通りの一本南側に、二条通りと呼ばれる通りがあります。猫たちが自由に歩き回るこの界隈は、かつては飲み屋街としてにぎわったところ。駅前の再開発の波を逃れたこの一角には、小さな店や住宅が密集し、車が入ることのできないほどの細い路地にもスナックや飲み屋の看板が多く見られます。
しかし現在では、昭和の香りは残したまま、空き家が目立つように。
2020年、ゲストハウス「global guesthouse」がオープンしたのをきっかけに、この場所に魅力を感じる人たちが集まり、昔の面影は残したまま、再び人が集う場所にしたいというプロジェクトが立ち上がりました。
餃子専門店、広場、カフェ―地域の人たちも巻き込み、作り上げる過程を楽しみながら、少しずつ、二条通りに人が集まりはじめています。
夜には真っ暗になり、人が寄り付かなくなった二条通りに、再び明かりを灯したいとはじまった「ぱっと二条プロジェクト」。
メンバーのみなさんにお話を伺いました。
工事が進んでいます。
協力して頂いている皆さんと、
路地にテーブルとベンチを出してランチ。
理想的な街の使い方です。
建物向かいは2M程しかなく、
通路は供用スペースとして考えています。
食事はあのお店。
食後の休憩はお向かいのカフェ。
お店が混んでいれば、
食事や飲み物を持って
広場へゆっくり。
そのままゲストハウスに宿泊。
ぱっと二条プロジェクトでは、
そんな街全体で
楽しめる場をつくります。
the day of the interview
2022.06
今から3年ほど前、不動産会社経営の若田部さんが、二条通りの一角の空き家をまとめて購入しました。のちに振り返ると、これが「ぱっと二条プロジェクト」のはじまり。
空き家は、建物としての価値は高くないもので且つ、路地が細く車が入ることができないため、解体工事が非常に困難だという現実がありました。
―そもそも若田部さんはどのような経緯でこの一角を買い取ることになったのですか?
若田部:以前ここに暮らしていた方のご親族から、空き家を何とかしたいというご相談がありました。それで、買いますって言っちゃったんです。決め手は…今まで見てきたなかでいちばんすさんだ印象を受けたからですかね。購入するにはかなりの勇気が必要でした(笑)。人が暮らしていた頃の洋服や家具なども散乱したままでしたからね。
売ろうと思っていたのですが、売れる状態までなかなか持っていけなかったので、リノベーションして自分で宿泊施設をやろうと腹をくくりました。そして建築士である溝口さんに、建築基準法や消防法、旅館業許可などの相談をして、設計もしてもらうことになったのです。
溝口:私は止めたんですけどね…。今広場にしたところにボロボロの廃屋があって、大きな蜘蛛が巣を張っているし、雑草が樹木のように育ってジャングルみたいになっていたし…「やめたほうがいい、こんなところ誰も来ませんよ」って。
若田部:そうは言っても溝口さんには仕事として頼んだから、やってもらったんですけどね。
熊倉:それとは別のところで、以前から僕と溝口さんのあいだで、人が集まる場所を作りたいねという話が出ていました。
溝口:佐野駅の周辺は、人が集まれる場所がないのですよ。ラーメン屋さんはたくさんあるけれどじっくり話すという感じでもないし、ファミレスすらありません。団体の会議のあとにちょっと話そうよ、となってもその場所がないのです。
熊倉:やりたいねって言っているだけで全く進まないから、一度若田部さんのところに相談に行きました。
溝口:「僕たち何をやればいいですか?」って(笑)。
若田部:そんなのふたりで決めろよって言ったよね(笑)。
熊倉:そこで若田部さんのほうでよさそうな空き物件があるなら、そこを使って場所づくりを…という話になったのです。駅東の街並みは面白いと思って、候補には挙がっていました。
若田部:でもそこからしばらく連絡が途絶えたよね。二人の意気地がなかった期間なんじゃないかと私は思っています(笑)。そこに救世主が現れました。
建築士である溝口さんと熊倉さんの「人が集まれる場所を作りたい」という思いが、かたちになりはじめるきっかけは、調理師の櫻井さんと小倉さんでした。二人は二条通りの雰囲気を熱烈に気に入り、長年の夢だった餃子専門店をこの地にオープンしたいと名乗り出たのです。
―櫻井さんが餃子専門店オープンのために物件を買われたのが、プロジェクトの始まりだったのですね?
櫻井:20年前から餃子屋さんをやりたいと思っていて、こういう感じのところを探して、足利の路地裏を歩いたりしていました。私、廃墟巡りが趣味で(笑)。店をやるのに、物件を借りることしか考えていなかったから、ここが売っていると知ったときには、お宝発見!という感じでしたね。
小倉:私も路地裏めぐりが好きで、話がある前にぶらぶらと歩いて、このあたりには目をつけていたんです。
櫻井:若田部さんご自身が所有しているとは知らずに、「この物件買いたいです。大家さんに値引き交渉してください」ってお願いしたら、いくらがいいの?って話が進んでいくからおかしいなって(笑)。
若田部:まさか女性ふたりがここでお店をするなんて思いもしなかったので「本当にいいんですか?」って聞いたくらい。決断早かったよねぇ…。
櫻井:にぎわっていたころが想像できるのが、この界隈のいいところ。ネオンがいっぱいあって、街灯がついていて…と目に浮かんでくるんです。
若田部:溝口さんと熊倉さんが2回目に相談に来たときに、「ふたりがぐちぐちしているあいだに、こっちの物件売れて、餃子屋さんのオープン決まったよ」って言ったら急にスイッチ入ったみたいです。
熊倉:それで、このゲストハウスの1階を借りて人が集まれる場所にしよう、だったらカフェかな、と二人で設計を始めました。飲食経営の経験はないから、運営は誰かにお任せできたらいちばんいいのだけど…。
プロジェクトにするならもう一人くらい誘いたいと名前が挙がったのが塗装業の堤崎さん。カフェでプロダクトもつくりたいという話が出て、堤崎さんなら塗装もモノづくりもできるし、何でもできるスーパーマンだから、と白羽の矢が立ちました。
堤崎:普通では考えられないことに自分が入れるなんてそれだけでわくわくしますよね。これはオレ、参加しないと!って思いました。何かをする過程が楽しいですね。
若田部:堤崎さんには、「はい」か「Yes」しかないもんね。
熊倉:そして、餃子屋さんとカフェだけだと寂しいね、と広場の構想が持ち上がりました。買ったものを食べたり、街歩きをしたときにぷらっと立ち寄ってもらったり…目指すものがはっきりしていたので、カフェより広場の工事のほうが先に進んで完成しました。
餃子専門店の改装工事が進むなか、空き地を広場にする構想も固まり、工事がはじまりました。しかし、車が入ることができない細い路地から1本60キロ以上もある大谷石を運びこんだり、杭を打つために廃材が埋まった土を掘り起こしたりするのは大仕事。プロジェクトメンバーが中心となり、地元石材店や建設会社の協力を得て、体を張って進めています。
―このプロジェクトに参加してよかったと思うことは?
溝口:いろいろな人と出会えることですね。SNSで発信したら、手伝いたいという人が現れてくれる。
熊倉:毎月20日に佐野駅前から二条通りの清掃活動を始めたのですが、SNSで知った町内の方も参加してくださって嬉しかったですね。設計事務所同士の集まりはよくあるけど、異業種の方と接することってなかなかない。
溝口:いろんな人のアイデアがあると、ひとりでは考えつかない答えに昇華することがあります。例えば広場の工事に、栃木市の外構屋さんが手をあげて協力してくれました。プロだから、知識が豊富で、彼が参加してくれて急に進んだし、私たちもレベルアップできました。
堤崎:今まで出会えなかった人と出会うと、今の自分の仕事や興味にも活かせる学びが多い。自分も成長して、このプロジェクトも成長できたらいいですよね。
溝口:人と出会って盛り上がれば、いつか仕事につながることもあるかもしれないしね。
堤崎:ガード下の居酒屋で、お酒を飲んでいるうちに盛り上がって新しいことが生まれる、みたいなことが起こるといいなと思います。
櫻井:この前、自転車に乗ったおじいさんがふらっとやってきて、昔はここがこうだった…といろんな話をしてくれたんですよ。それでますますにぎわっていた頃のイメージが沸いて嬉しくなって。
熊倉:新しい店だとそんな風にふらっと入れないですよね。僕も、近くの商店街の人とも知り合いになって、挨拶からはじまって、そのまま道端でおしゃべりしたりします。そういうのも、最近なかなかないことですよね。
プロジェクトメンバーは全員、それぞれの仕事をしながらの参加なので、プロジェクトは進んだり、進まなかったり。でも、「やらされている人」はいない、といいます。言葉に詰まるほどプロジェクトの意義を話し合ったのち、一緒に体を動かして汗を流したら遠慮が少なくなったそう。
―このプロジェクトを通して、二条通りがどのようになったらいいなという理想はありますか?
溝口:こうなったら完成、というのはないですね。むしろ、はっきりさせない方がいいと思います。ちょっとずつ人が集まって、空き家に新しい店が徐々にできていけばいい。その過程に意味があるのだと思います。
若田部:この一角に興味を持ってくれそうな人に出会うたびに、声をかけてお誘いしています。このカフェはいつオープンするのかな?
溝口:夏休み前には…。
櫻井:7月7日、かな(笑)。
溝口:え?早くない?
熊倉:オープニングで七夕まつりですね。
※オープンは9月に延期となりました。
溝口:……。再開発の対象にならなかったこの駅東の地域にも、ぽつぽつと小さなお店ができてきて、いい流れだと思います。ちょっとでも人が集まって活気が出ればいいですね。
若田部:相談を受けてこの一角を買ったときは、まさかこんなことになるとは思っていませんでした。街灯も消えたままで、人が寄り付く状態ではなかったので、ひっそりこっそり、ひとりで電気をつけたいと思っていましたから。そうしたらたまたまの出会いが重なって、こうやって人が集まってくれました。ありがたいことですね。
二条通りには街路灯があります。
この街路灯には「二条通り」という札が掛かっており、
かつての面影を残しています。
今はその機能を果たしていませんが、
「ぱっと」街に明かりを灯す
ひとつのツールでもあるこの街路灯を
復活させたいと考えています。
今日は地元の電気屋さんに
状態を見に来て頂きました。
支柱も錆による腐食がみられ、
安定器も故障している可能性が高いとのこと。
状態はあまり良くはありませんが、
今では珍しい独特のシェードデザインは
二条通りの魅力のひとつです。
再び二条に灯りを。
そうしたら、
たまたまの出会いが重なって、
こうやって、
人が集まってくれました。
mizoguchi taishi
溝口 泰史
みぞぐち建築設計事務所 代表
[経歴] □1976年生まれ □1999年/足利大学(旧足利工業大学建築学科)卒業
□2020年/みぞぐち建築設計事務所に改称
●趣味/建物探訪 ●特技/ベッドに入ってから熟睡する早さ
●性格/几帳面な面倒くさがり屋 ●好きな食べ物/ホットサンド
https://mizoguchi-arch.com/
wakatabe satoshi
若田部 賢
有限会社グローバルアクションパートナーズ 代表
□1973年生まれ □京都先端科学大学(旧京都学園大学)卒業
[仕事経歴] □建設会社不動産部 □住宅メーカー □建設会社不動産部
□有限会社グローバルアクションパートナーズ開業
●趣味/映画鑑賞・野球審判 ●性格/好奇心旺盛・マイペース
●好きな食べ物/シュウマイ ●最近ハマってること/筋トレ
https://ga-partners.jp/
sakurai noriko
櫻井 規子
調理師
□1973年生まれ
●趣味/廃墟めぐり ●特技/ピアノ・フルート ●性格/即断即決・自由人
●好きな食べ物/塩辛・えび
ogura atsumi
小倉 あつみ
調理師(幼稚園教諭免許あり)
□1980年生まれ
●趣味/路地裏めぐり・アクセサリー作り ●特技/どこでも寝られます!
●性格/忍耐強い・のんびり屋 ●好きな食べ物/餃子・サーモン
tsutsumizaki toru
堤崎 徹
Earth Color 代表
□1976年生まれ
[職業] □炙って、溶接する、塗装屋。 □設計して、モノを作る、塗装屋。
□何でも出来ることをする料理人。 □板金加工、3DCADの先生。
●趣味/読書、料理 ●特技/プログラミング、溶接 ●性格/好奇心の塊
●好きな食べ物/すき家の豚丼
https://earthcolor1.wordpress.com/
kumakura naoki
熊倉 ナオキ
熊倉建築設計事務所
[経歴] □1983年生まれ □2006年 足利工業大学 工学部 建築学科卒業
□2006年 設計事務所勤務 (-2009年) □2010年 熊倉建築設計事務所勤務
●趣味/登山・ドライブ・建物を見ること ●性格/気にしい ●好物/日本酒
https://kuma-archi.com/
Photographer | アラタケンジ https://www.aratakenji.com/ |
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[プロフィール] |
1976年 兵庫県神戸市生まれ。 2004年 都内スタジオ勤務後、フリーアシスタントとして田村昌裕に師事。 2006年 フリーランスとして独立。自費出版で写真集『ami』を制作する。 同写真集でcanon写真新世紀佳作受賞。(ボリス・ミカイロフ選) 2015年より栃木県に拠点を移し活動始める。 |
[展示歴] |
2006年 『ami』TSUTAYA TOKYO ROPPONGI (TOKYO) FLAMINGO CAFE(OSAKA) 写真新世紀 東京展 2010〜2014年 アトマ展 元麻布ギャラリー(TOKYO) 2015年『ふだんの金沢に出会う旅』出版記念写真展 gallery point (TOKYO) 『ふだんの金沢に出会う旅』フェア 蔦屋代官山(TOKYO) 『本とコーヒー』tegamisya (TOKYO) 2022年 『encounter』 カクイチ実験室 (TOCHIGI) |