essay & illustration
SASAKI GORO

佐々木悟郎 エッセイ | フリーペーパー push online
no.01
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「縁」

宇都宮の文星芸術大学で教え始めて7年目になろうとしている。
私の所属するイラストレーターの協会がお世話になっている画廊のMさんより紹介されたのが、大学のN先生だった。
N先生は学生時代から私のイラストレーションを見てくれており、いつか文星大学に呼びたいと長年思ってくださっていたようだ。
N先生の大学の時の友人であったM さんを介して、お会いしてお話を聞いたのがきっかけだが、
まさかこんなに長く宇都宮に毎週通う事になろうとは予想だにしなかった。
昨年の秋、文星大学の卒業生のSより「仕事で同席したデザイナーさんがお仕事をお願いしたいそうです」と連絡をもらった。
その時は単純に、この栃木県の地でもやっとお仕事をできる機会が来たかと、嬉しく思った。
そのデザイナーさんがこのPUSHの仕掛人こと坂内さんだ。
坂内さんも私の絵は以前よりご存知で、まして文星で教えていることを知り連絡出来るチャンスを伺っていたところだったと言う。
打ち合わせを終え一段落したところで、名刺の住所を改めて見た。
宇都宮の他に東京の住所も載っており、南青山とあるではないか。
番地を見るとなんと私の家のすぐ近くだ。歩いて1分とかからない場所である。
こちらは、と聞くと30年ほど前にYデザイン事務所で働いていて、その縁で今でも部屋を借りているということだ。
Yさんと言えば私たちの大先輩のイラストレーターで、その優しい人柄でまだ駆け出しだった自分にも良くしてくださったものだ。
灯台下暗しというのか、Yさんの事務所がそんな近くにあったことをこのとき初めて知った。
縁とは不思議だなと思う。
それまでの人と人の出会いが、ある時連鎖反応のようにつながる瞬間がある。
自分は一人で生きているのだ、などと思いがちだがとんでもない。
N先生がいなければ宇都宮にも縁はなかったし、坂内さんとこうして一緒に仕事に関われることもなかったかも知れない。
そしてそこにはYさんという不思議なつながりもあった。

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