初公開 荒木月畝 ≪草花図屏風≫ 大正期 個人蔵
小杉放菴記念日光美術館
開館25周年記念
2022.09.17 Sat - 11.20 Sun
展覧会名 |
開館25周年記念 華厳社 下野の画人たち |
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会 期 |
2022年9月17日[土]~ 11月20日[日] |
休 館 日 |
毎週月曜日 ※ 10月10日は開館し、その翌日を休館 |
開館時間 |
午前9時30分~午後5時 ※ 入館は午後4時30分まで |
入 館 料 |
一般 730(650)円、大学生 510(460)円、高校生以下は無料 [ 11月3日「文化の日」は無料開館 ] ※()内は20名以上の団体割引料金 ※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、日光市公共施設使用料 免除カードの交付を受けた方とその付き添いの方1名は無料 ※第3日曜日「家庭の日」(9月18日,10月16日,11月20日)は、大学生以下無料 ※日光市民は一般300円、大学生200円、高校生以下無料 |
主 催 |
公益財団法人 小杉放菴記念日光美術館/日光市/日光市教育委員会/下野新聞社 |
お問合せ |
小杉放菴記念日光美術館 TEL:0288-50-1200 |
小杉放菴記念日光記念美術館では、企画展「華厳社―下野の画人たち」を開催いたします。
華厳社は、 1929(昭和4)年に、東京で活躍していた栃木県ゆかりの日本画家たちによって結成されたグループです。
この年12月に開催された第一回東京展に出品した会員は、小堀鞆音、荒井寛方、小杉放庵(放菴)、岡田蘇水、関谷雲崖、福田浩湖、小林草悦、松本姿水、石川寒巌、武井晃陵、大貫銕心(徹心)、河内舟人の12名。翌月1930(昭和5)年1月には宇都宮展が開催され、ここで荒木月畝、戸室臨泉、大山雅堂(魯牛)が加わり、計15名による集りとなりました。
また同じく栃木県出身で美術雑誌『美之国』を主宰していた石川宰三郎が、理事として同会を支援していました。
その後、『日本美術年鑑』には昭和17年版(1943年3月刊)まで存在が記録されているものの、具体的な活動は確認できません。おそらく1931(昭和6)年の小堀鞆音急逝により、正式な解散はしないまま、活動停止状態にあったのではないかと推測されます。
実質1年にも満たない短い活動期間で終わってしまったため、これまでその活動内容について充分な調査研究がなされてきませんでした。
しかし、華厳社に参加した画家たちのなかには、美術史に大きく名を残している大家から、現在では忘れられかけている画家まで含まれており、そんな彼・彼女らが同じ舞台で作品発表をしていたということは、たいへん興味深いことではないでしょうか。
それだけでなく、華厳社の活動には下野新聞社も大きく関わっており、戦前における美術団体と地方新聞社との関係についても考えさせられます。そもそも華厳社の設立自体に同社が関与していた可能性が高く、これに連動して創設された公募展「下野美術展覧会」は10年近く続き、華厳社の画家たちもその審査に関わるなど、栃木県下の美術教育への影響は、決して小さくないものだったのです。
本展では、この華厳社の画人たちの大正・昭和初期の代表的な作品を一堂に会し、栃木県が輩出した優れた画人たちの優品をご紹介すると共に、その存在意義について再考してみたいと思います。
担当学芸員によるギャラリー・トーク
10月14日[金]、11月19日[土]
各時間 = 午前11時より(1時間程度)
※ 入館券をお求めのうえ、美術館受付前にお集まりください。
1. 華厳社について再考する初の展覧会。
1929(昭和4)年に、東京で活躍していた栃木県ゆかりの日本画家たちによって結成されたグループ「華厳社」。
同人だった小堀鞆音、荒井寛方、小杉放庵といった著名画家の年譜にその名前だけは登場するものの、具体的にどんな団体だったのか、どのような活動をしたのかといったことは、これまでほとんど研究されてきませんでした。
本展は、この華厳社を再考する初めての展覧会となります。
2. 優れた実力を持ちながら、忘れられてしまった画家たち。
華厳社の会員のうち、小堀鞆音、荒井寛方、小杉放庵はよく知られている画家です。関谷雲崖、松本姿水、石川寒巌、大山雅堂(魯牛)は、栃木県内のミュージアムで回顧展が開催されたことがあり、美術に関心がある人なら知っているでしょう。しかし、荒木月畝、岡田蘇水、福田浩湖、小林草悦、武井晃陵、大貫銕心(徹心)、河内舟人となると、どうでしょうか。ほとんどの画家が栃木県内外のミュージアムで所蔵が少なく、現在紹介される機会がきわめて少ない画家たちです。彼・彼女たちは決して実力が足りなくて忘れられていったわけではありません。本展では、その知られざる魅力的な作品たちをご紹介いたします。
3. 20点以上が初公開作品。
本展では華厳社同人53点の出品を予定していますが、県内ミュージアムの所蔵品でもまだ展示したことがないという作品があり、20点以上が公立美術館での初公開作品となります。
この機会をどうぞお見逃しなく!
華厳社記念写真(1930年1月撮影)
前列右から、関谷雲崖、小堀靹音、石川宰三郎。
後列右から、田口勝三郎、川村直成(下野新聞社専務)、大貫銕心、小林草悦、武井晃陵、河内舟人。
Ⅰ “マダレ”時代の小杉放庵
小杉放菴は、最初〈未醒〉と号し、1923(大正12)年から〈放庵〉の号を併用し始め、1933年末から〈放菴〉となります。振り返れば10年程度の期間であった〈放庵〉時代は、小杉が水墨画へと傾倒し始めた時期でした。
本章では華厳社の活動期と重なる〈放庵〉時代の作品にスポットを当てます。
左:初公開 小杉放庵 ≪闘球図≫ 1930年頃 個人蔵
右:小杉放庵 ≪寒山入壁図≫ 1930年頃 小杉放菴記念日光美術館
Ⅱ 仏画と歴史画と
栃木県を代表する日本画家である小堀鞆音と荒井寛方は、前者は歴史画、後者は仏画の第一人者でもありました。本章ではこの2人の作品に加え、石川寒巌の寒山拾得図や、鞆音に学んだ歴史画家である武井晃陵の作品をご紹介します。
左:小堀鞆音 ≪佐野了伯聴平語図≫ 華厳社展出品作 栃木県立美術館
右:初公開 小堀鞆音 ≪清正望冨嶽図≫ 1927-1930年頃 佐野市立吉澤記念美術館寄託
荒井寛方 ≪龍虎≫ 1931年 再興第18回院展 栃木県立美術館
左:荒井寛方 ≪観世音菩薩≫ 1929年頃 さくら市ミュージアム ―荒井寛方記念館―
中:初公開 武井晃陵 ≪配所の菅公≫ 個人蔵
右:初公開 武井晃陵 ≪蘇東坡≫ 個人蔵
Ⅲ 花鳥と人と
花鳥画は日本画家にとって古くから好まれてきたテーマです。華厳社には、身近な草花を美しく描いた荒木月畝、大胆な構図で薔薇や芭蕉を描いた小林草悦、花鳥画にモダニズムの息吹を吹きこんだ松本姿水など、花鳥画を得意とした画家たちがいました。本章では、彼・彼女たちの作品を、河内舟人の優しい筆で描かれた子どもたちの絵とあわせてご覧いただきます。
左:初公開 荒木月畝 ≪十友図≫ 昭和初期 個人蔵
右:松本姿水 ≪霜の朝≫ 1933年 第14回帝展 宇都宮美術館
左:初公開 河内舟人 ≪五月晴れ≫ 個人蔵
中:初公開 小林草悦 ≪春光≫ 1930年頃 個人蔵
右:初公開 小林草悦 ≪筧≫ 1930年 第2回青龍社展 日光市立今市小学校
Ⅳ 山水と風景と
〈山水〉は、昔の日本では〈風景〉の意味で使われていた言葉ですが、〈山水画〉は実景そのものではなく、内なる心の表現を託した、理想の景色を描くものでした。
華厳社には岡田蘇水、関谷雲崖、福田浩湖といった伝統的な山水画を得意とする画家から、南画の世界に個性を表出した石川寒巌や大山雅堂(魯牛)、濃厚な色彩で〈山水画〉と〈風景画〉を融合させた大貫銕心(徹心)がいました。
最終章では、彼らの多様な風景表現を一堂に会します。
左:初公開 岡田蘇水 ≪松渓仙館図≫ 佐野市立吉澤記念美術館寄託
中:関谷雲崖 ≪渓山新緑図≫ 1915年 第9回文展 大田原市黒羽芭蕉の館
右:初公開 福田浩湖 ≪祇王寺≫ 1933年 第14回帝展 佐野市・善増寺
石川寒巌 ≪松石不老図≫ 1932年 第11回日本南画院展 栃木県立美術館
左:石川寒巌 ≪踏断流水≫ 1929年 第8回日本南画院展 栃木県立美術館
中:大山雅堂(魯牛) ≪暮靄≫ 1928年 栃木県立美術館
右:大山雅堂(魯牛) ≪竹林図≫ 1930年代後半 小杉放菴記念日光美術館
左:初公開 河内舟人 ≪晩秋山水≫ 個人蔵
右:初公開 河内舟人 ≪蟹図≫ 個人蔵
左:大貫銕心(徹心) ≪田園風景≫ 栃木県立美術館
右:初公開 大貫銕心(徹心) ≪霧降の滝≫ 1930年 第11回帝展 栃木県立美術館